グラフィックデザイナーのノート

松 利江子(フリーランス・グラフィックデザイナー)の公開ノート

雑誌『PRODISM』創刊号・表紙・ブックデザイン

『PRODISM』創刊号の表紙デザイン

画像: 創芸社 ( http://www.prodism.com/ ) 


メンズファッション誌『PRODISM』創刊号のブックデザインです。

編集長は渡邊敦男さんで、明日10月24日に発売(価格:980円)されます。


『PRODISM』は、大人のためのプロダクト・ファッションマガジンとして創刊されますが、そのテーマに基づいたルールが気になります。


それは、


「プロダクト至上主義」をテーマに、既存のメンズファッション誌にはない独自の世界観を提案する。


というもので、

有名人・著名人に限らず、「顔」は一切出さない』
そうです。


すべてのページで「物」を中心に扱うのは、カタログでは普通の事ですが、ファッション雑誌では、めずらしいやり方です。

その背景にはブランドやトレンドより、「自分にあったもの」「自分が本当にほしいもの」へと、想定する読者の趣向が変化している事も大きいのではないか、と思います。


以前、「雑誌『ハーパーズ バザー』創刊の広告デザイン」という記事でも書きましたが、「ハーパーズ バザー」創刊を伝える駅貼りポスターも、モデルの顔を出さないでデザインされていました。

このような流れは、ここ数年来のライフスタイル提案や使用イメージといった広告の逆を行くものです。これが変化の予兆だとすると興味深いですね。

または「従来のライフスタイル提案・使用イメージを喚起する広告」と同じ方針で手法だけ逆にして、より読者の使用イメージを強調するため、なのかもしれません。

今まではモデルのカリスマ性によって、商品が売れていたと仮定しましょう。だけど、読者にとってモデルは他人です。自分ではありません。だからモデルの顔を消して、使用イメージだけを見せます。
つまり、
「モデルのカリスマ性で服を売る」から「洋服を売るためのモデル」
という本質へと立ち返るのです。


前回は、 「デザインの背景と存在価値について:『ドクターマーチン』のディスプレイデザイン」という記事を書きました。これは今回のものと真逆の手法ですが、どちらが正しいというものではなく、その時々でその会社やブランドに相応しいやり方を選ぶ必要があるのです。

とにもかくにも、「どのような手法で展開するのか」、「どのようにして魅せていくのか」、今後を楽しみに注目していきたいと思います。 



【関連URL】

PRODISM(プロディズム)10/24雑誌創刊!|創芸社


ブックデザイン・装丁 制作事例 | グラフィックデザイン事務所 DESIGN+SLIM 東京・神奈川


【以前の雑誌に関する記事はこちら】

雑誌『ハーパーズ バザー』創刊の広告デザイン : グラフィックデザイナーのノート


【比較・対象の記事はこちら】

デザインの背景と存在価値について:『ドクターマーチン』のディスプレイデザイン : グラフィックデザイナーのノート


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ドクターマーチン・店頭・ブランディングデザイン

東京・青山にある『Dr. Martens』ディスプレイデザインです。

イギリスらしい、クラシカルな店舗デザインになっていました。


『Dr. Martens』は、「労働者の象徴」からスタートしたブランドです。その後「Mod's」から派生した「スキンヘッズ」、「ストリートギャングの象徴」となり、1970年中頃には、パンクロッカーとファンの間で愛用されました。そして『Dr. Martens』のブーツと靴は、ユースカルチャーと結び付き、今に至ります。


背景には、階級社会があるのでしょう。ホワイトカラーは安全靴は履きませんからね。

また、良く知られている通り、イギリスはブラック・ユーモアや皮肉が発達した国です。だから階級社会と言ってもどちらが上とか下ではなく、単純に別のものであり、個人として誇りを持つ事を「たくましさ」と考えられているのでしょう。カウンター・カルチャー(非サブカル)とはそういうものです。


ドクターマーチン・店舗・ディスプレイデザイン

ショーウインドウには、商品と人物のコラージュと、靴やバッグがバランスよく飾られていました。展開されているアイテムと、それらがある生活を切り取ったコラージュは、購入後のライフスタイル・商品の使用イメージを喚起させるものです。


そのような演出はファッションやインテリアの場合、とりわけ有効だと思います。それらが特別なシーンではなく、よくある日常の一コマであることによって、リアリティを感じさせるものになっているからです。


そしてコラージュの、写真を少し荒っぽく破いた感じと、「THE WHO」も使用したターゲットマーク(オリジナルは、英国空軍のマーク)が、何より『Dr. Martens』のテイストであると思います。


なぜ、こういうデザインがされているのか。

このブランドがなぜ、こういうポジションにあるのか。

見た目だけではなくそういった背景を抑えなければ、デザインの力はきちんと使えません。


世の中に素敵なデザインは沢山あります。

だけど素敵なデザインに触れた時、上辺ではなく、成り立ちを掘り下げる事や在り方について一度考えてみる。そういう事を知ると、デザインはもっと味わい深い、楽しみになるのです。



【関連URL】

ドクターマーチン・エアウエアジャパン Dr.Martens Air Wair, Japan./オフィシャルサイト


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ivory court・パンフレットデザイン・表紙

アパレルブランド『ivory court』パンフレットデザインです。

秋冬コレクションのパンフレットが配布されていました。


12ページの蛇腹折りで、片面には「Men's」、もう片方の面には、「Women's」のコーディネートが掲載されています。


ivory court・パンフレットデザイン・中面


ブランド名の由来を見てみると、「さまざまな場面で用いられている『ivory』のように、トータルライフスタイルをコーディネートします。」と記載されていました。


パンフレットには、ブランド名でもある「アイボリー」ファンシーペーパーが使われています。


光沢のある印刷用紙ではなく、手触りのよい温かみのある「ファンシーペーパー」の選定は、『ivory court』のブランドとしても、秋冬コレクションとしてもぴったりだと思いました。



【関連URL】

ivory court | アイボリーコート


パンフレットデザイン 制作事例 | グラフィックデザイン事務所 DESIGN+SLIM 東京・神奈川


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三和酒類・いいちこ・ポスターデザイン

前回に続いて、「デザインを変えていい時/変えてはいけない時」。

今回は『いいちこ』ポスターデザインです。


先日、表参道で駅貼り広告(B倍ポスター)を見かけました。

様々な自然の中に『いいちこ』のボトルが置かれ、短いコピーロゴが添えられている広告は、もう何年も続いているスタイルです。


この独特の世界観は、簡単に形成できるものではありません。


駅で見かけることがなかったとしても、長年にわたるテレビCMや、広告賞でメディアに取り上げられたり、何かと目にする機会も多かったと思います。


久しぶりに見ると、懐かしさというだけでなく、変わらないことに対する安心感のようなものを感じました。


雑踏の中でそれを見つけるとホッとするような、『いいちこ』は、この世界観がいいのですが、なぜ、このような広告展開がされているのか、この広告展開が長年に渡って続いているのかについて、よく考えてみた方が良いでしょう。

ちなみに、いつからこのスタイルなのか調べてみると、1984年からでした。

時代はバブル全盛の頃ですね。


84年から毎月一枚づつのポスターを制作すると、29年で約350点です。

約30年経った今も続くのは、並大抵のことではないですね。


駅貼りポスター・テレビCMなどの広告制作者は、

アートディレクター:河北 秀也さん

  コピーライター:野口 武さん

    デザイナー:土田 康之さん

    カメラマン:浅井 慎平さん


写真のポスターは、2013年9月のものです。



【関連URL】

iichikoポータルページ


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岡山木村屋・バナナクリームロール・パッケージデザイン

岡山木村屋『バナナクリームロール』パッケージデザインです。


ずいぶん昔からある、岡山では有名なローカルなパンですが、ずっと変わらないデザインで、親しみやすさがあります。


パッケージデザインは、ロングセラーの商品であっても、リニューアルされることが多いのですが、あえて「変えない」という選択もあります。


『バナナクリームロール』のように、見ると懐かしさで買ってしまうような商品は、味もパッケージも変わらない事がいいのです。


ある意味、ヴィンテージですね。


Levi'sはそれをかつて、「The Origin」というキーワードで、ブランディングしていました。


クライアントもデザイナーも「ここは変える」、「ここは変えてはいけない」というジャッジをくれぐれも間違えないように気をつけなければなりません。


なぜなら、変えてはいけないところを変えてしまうと、今までのお客さんの大半を失ってしまう事につながるからです。



【関連URL】

岡山木村屋


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