森美術館開館20周年記念展「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」を観てきました。展覧会のタイトルには、現代アートの国語・算数・理科・社会とありますが、会場は「国語」、「社会」、「哲学」、「算数」、「理科」、「音楽」、「体育」、「総合」の8つのセクションで構成されています。
展示されている作品は、それぞれのセクションにふさわしいものが集められており、社会問題を扱った作品や問題提起をする作品など、現代アートが持つ多くの問いを投げかけています。会場で一つ一つの作品と向き合い、考えを巡らせる貴重な体験となりました。また、展示作品の半数以上が森美術館のコレクションであり、森美術館だからこそ実現した展覧会と言えます。
国語のセクションの、ワン・チンソン(王慶松)の
『フォロー・ミー(Follow Me)』(2003年)
今回の展覧会のメインビジュアルとして使われています。
実物は思っていたより小さな作品でした。
印象に残る作品は多数ありましたが、職業柄面白いと思ったのが、社会のセクションの「ジャカルタ・ウェイステッド・アーティスト(Jakarta Wasted Artists)」による作品、『グラフィック・エクスチェンジ(Graphic Exchange)』です。
本作はジャカルタを拠点に活動する4名のクリエイターから成る「ジャカルタ・ウェイステッド・アーティスト」のプロジェクトで、商店や事業者などの看板を譲り受け、代わりに新しい看板のデザインと制作を請け負うというものです。
このプロジェクトに賛同する事でクライアントは自分達の要望に適った新しい看板を手に入れる事ができます。そしてアーティスト側にとっては作品として発表するだけでなく、ビジュアル・ヒストリーとしてアーカイブすることができる非常に意味のあるプロジェクトとなっています。この作品は、商業的な看板をアートに変換することで、都市空間やコミュニティに新たな価値を与える試みだと思いました。
哲学のセクションの、李禹煥(リ・ウファン)の
『対話』(2017年)と『関係項』(1968/2019年)
『関係項』は、重ねられた鉄板とガラス板の上に石が置かれている作品です。
人工素材と自然素材を用いて、異なる要素が出来事として関係し合う様子を現しています。
近年の作品なので、昨今の社会情勢と重ね合わせて考えずにはいられませんでした。
「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」は、森美術館にて2023年9月24日(日)まで開催されています。
【関連URL】