グラフィックデザイナーのノート

松 利江子(フリーランス・グラフィックデザイナー)の公開ノート

2013年10月

青山フラワーマーケット・カタログデザイン・表紙

フラワーショップ『Aoyama Flower Market』カタログデザインです。

タータンチェック柄の、秋用が配布されていました。


このカタログは、12ページの薄いものですが、なんと「糸かがり綴じ」で製本されています!

タータンチェックの表紙に、赤い糸が効いて、とても素敵なデザインになっていました。

「糸かがり綴じ」とは、書籍などの「背」の部分に糸を通して綴じる製本方式です。主にページが多く厚みがある場合に頑丈に綴じるためのもので、今回のような薄いものに使うのは、レアなケースと言えます。

この行程は時間も予算もかかるものですが、その手間をかけることによって、このショップがカタログを「読み捨てられるもの」と考えているのではなく、とても大切に考えている事が伝わってきます。


青山フラワーマーケット・カタログデザイン・中面

中面は「敬老の日」「お月見」「お彼岸」「ハロウィン」といった、秋の行事に合わせて、「アレンジメント」や「ブーケ」が多数掲載されています。(写真は、ハロウィンのページです。)

表紙と同じ、タータンチェックの、オリジナルアレンジメントもありました。


また、商品写真、商品名、価格、商品説明などの必要事項と併せて、「秋の風物詩『お月見』とは?」、「『お彼岸』のはじまりは?」というように、行事の説明や風習についても書かれていました。ただ商品を掲載するだけでなく、「季節」と「使用イメージ」をきれいに紐付ける事で「お花を買う」というアクションが、生活を豊かにする事を示しています。

「糸かがり綴じ」とお花がもたらす生活の豊かさ、その豊かさには勿論、楽しさもあるでしょう。実際、「青山フラワーマーケット」のカタログは、見ているだけでもとても楽しい気分になってきます。


青山フラワーマーケット・ディスプレイデザイン

店頭も素敵な秋のディスプレイになっていました。

この日は、贈り物に「ブーケ」をひとつ購入しました。



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【関連URL】

花・フラワーギフトなら青山フラワーマーケット


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ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・ジャケットデザイン1

「The Velvet Underground & Nico」


早朝(2013年10月27日)、「ルー・リード」が他界しました。

写真は『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ』レコードジャケットです。

「The Velvet Underground & Nico」「アンディ・ウォーホル」がプロデュースし、ジャケットのデザインを手掛けています。

未だにTシャツやポストカードやクッションになっていてあちこちで目にするので、40年近く前のデザインとは思えません。

変わらない「安定」のデザイン・信頼のヴィンテージ感ではなく、今、そこにある感覚。

時代の空気を引きずらない軽やかさは、ポップ・アートの本領発揮といったところでしょう。


ジャケットについては有名すぎて、もう語る事もないのですが、中面や裏面がどのようなものなのかは、持っている人しか知らないと思いますので掲載しておきます。


ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・ジャケットデザイン2

「The Velvet Underground & Nico」:ジャケット中面


ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・ジャケットデザイン3

「The Velvet Underground & Nico」ジャケット裏面


日本には似て非なるサブカルはあるのですが、カウンターカルチャーというものはなかったのかもしれないと最近、感じます。もちろん私自身も例外ではありません。

なので、その他のカウンターカルチャーの根付いた国の人々のように、「ルー・リード」「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド」の価値が肌身に沁みているとは言いがたいのですが、彼の訃報と共に話題となった、「ルー・リード」が自身のソーシャル・メディアを通じた最後のメッセージは、「らしさ」を感じました。

タイトル(?)は「The Door」というものです。

https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10151988713575953&l=de47fbf994



 R.I.P. LOU REED





【関連URL】

The Velvet Underground Web Page


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オールプルーン・オールオサツ・パッケージ・ロゴ・デザイン1

東ハト『オールプルーン』『オールオサツ』パッケージデザインです。

「オールレーズン」で知られる、「オールシリーズ」として発売されています。


「オールレーズン」は、1972年に発売され、約40年に渡るロングセラーとなっている商品です。

以前のパッケージは、正統派のお菓子といった印象でしたが、リニューアルされた際に「All」の文字が可愛らしいキャラクターになり、とても親しみやすいイメージになりました。


「All Raisin」「 All Apple」といったように、「オールシリーズ」の商品名のロゴとして、このキャラクターを使用するのは、とてもいいアイディアですね。スーパーやコンビニの棚で見かけても、一目で「オールシリーズ」の商品だとわかりました。


オールプルーン・オールオサツ・パッケージ・ロゴ・デザイン2

お菓子は「おやつ」として、一息つく時やリラックスしたい時などに、食べることが多いのではないかと思います。そんな時に、このキャラクターの可愛い笑顔に触れると、「おやつってそういうものだよね」とよりリラックスできるのではないかと思いました。
限定も高級感もそれはそれで素晴らしいとは思いますが、何より素晴らしいのは「おやつとは何か?」という本質と向き合う東ハトさんの真摯さだと思います。


このような「工夫」と「遊び心」は、デザインにおいてとても大切なことです。このリニューアルにより、私はすっかり「オールシリーズ」のファンになりました。パッケージと共に中身もリニューアルされ、どれも更に美味しくなっています。


ちなみに、『オールプルーン』は、期間限定だったようで、現在は取り扱いがないようです。

『オールプルーン』『オールオサツ』は、どちらもとても美味しかったので、またの発売を楽しみにしています。毎年、この時期にこうやって思い出されるようになるのと、「オールレーズン」だけを一年中売り続けていくのとでは、やはり企業イメージも全然違ってきますね。



【関連URL】

株式会社 東ハト/商品カタログ/オールレーズン


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雑誌『PRODISM』創刊号・表紙・ブックデザイン

『PRODISM』創刊号の表紙デザイン

画像: 創芸社 ( http://www.prodism.com/ ) 


メンズファッション誌『PRODISM』創刊号のブックデザインです。

編集長は渡邊敦男さんで、明日10月24日に発売(価格:980円)されます。


『PRODISM』は、大人のためのプロダクト・ファッションマガジンとして創刊されますが、そのテーマに基づいたルールが気になります。


それは、


「プロダクト至上主義」をテーマに、既存のメンズファッション誌にはない独自の世界観を提案する。


というもので、

有名人・著名人に限らず、「顔」は一切出さない』
そうです。


すべてのページで「物」を中心に扱うのは、カタログでは普通の事ですが、ファッション雑誌では、めずらしいやり方です。

その背景にはブランドやトレンドより、「自分にあったもの」「自分が本当にほしいもの」へと、想定する読者の趣向が変化している事も大きいのではないか、と思います。


以前、「雑誌『ハーパーズ バザー』創刊の広告デザイン」という記事でも書きましたが、「ハーパーズ バザー」創刊を伝える駅貼りポスターも、モデルの顔を出さないでデザインされていました。

このような流れは、ここ数年来のライフスタイル提案や使用イメージといった広告の逆を行くものです。これが変化の予兆だとすると興味深いですね。

または「従来のライフスタイル提案・使用イメージを喚起する広告」と同じ方針で手法だけ逆にして、より読者の使用イメージを強調するため、なのかもしれません。

今まではモデルのカリスマ性によって、商品が売れていたと仮定しましょう。だけど、読者にとってモデルは他人です。自分ではありません。だからモデルの顔を消して、使用イメージだけを見せます。
つまり、
「モデルのカリスマ性で服を売る」から「洋服を売るためのモデル」
という本質へと立ち返るのです。


前回は、 「デザインの背景と存在価値について:『ドクターマーチン』のディスプレイデザイン」という記事を書きました。これは今回のものと真逆の手法ですが、どちらが正しいというものではなく、その時々でその会社やブランドに相応しいやり方を選ぶ必要があるのです。

とにもかくにも、「どのような手法で展開するのか」、「どのようにして魅せていくのか」、今後を楽しみに注目していきたいと思います。 



【関連URL】

PRODISM(プロディズム)10/24雑誌創刊!|創芸社


ブックデザイン・装丁 制作事例 | グラフィックデザイン事務所 DESIGN+SLIM 東京・神奈川


【以前の雑誌に関する記事はこちら】

雑誌『ハーパーズ バザー』創刊の広告デザイン : グラフィックデザイナーのノート


【比較・対象の記事はこちら】

デザインの背景と存在価値について:『ドクターマーチン』のディスプレイデザイン : グラフィックデザイナーのノート


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ドクターマーチン・店頭・ブランディングデザイン

東京・青山にある『Dr. Martens』ディスプレイデザインです。

イギリスらしい、クラシカルな店舗デザインになっていました。


『Dr. Martens』は、「労働者の象徴」からスタートしたブランドです。その後「Mod's」から派生した「スキンヘッズ」、「ストリートギャングの象徴」となり、1970年中頃には、パンクロッカーとファンの間で愛用されました。そして『Dr. Martens』のブーツと靴は、ユースカルチャーと結び付き、今に至ります。


背景には、階級社会があるのでしょう。ホワイトカラーは安全靴は履きませんからね。

また、良く知られている通り、イギリスはブラック・ユーモアや皮肉が発達した国です。だから階級社会と言ってもどちらが上とか下ではなく、単純に別のものであり、個人として誇りを持つ事を「たくましさ」と考えられているのでしょう。カウンター・カルチャー(非サブカル)とはそういうものです。


ドクターマーチン・店舗・ディスプレイデザイン

ショーウインドウには、商品と人物のコラージュと、靴やバッグがバランスよく飾られていました。展開されているアイテムと、それらがある生活を切り取ったコラージュは、購入後のライフスタイル・商品の使用イメージを喚起させるものです。


そのような演出はファッションやインテリアの場合、とりわけ有効だと思います。それらが特別なシーンではなく、よくある日常の一コマであることによって、リアリティを感じさせるものになっているからです。


そしてコラージュの、写真を少し荒っぽく破いた感じと、「THE WHO」も使用したターゲットマーク(オリジナルは、英国空軍のマーク)が、何より『Dr. Martens』のテイストであると思います。


なぜ、こういうデザインがされているのか。

このブランドがなぜ、こういうポジションにあるのか。

見た目だけではなくそういった背景を抑えなければ、デザインの力はきちんと使えません。


世の中に素敵なデザインは沢山あります。

だけど素敵なデザインに触れた時、上辺ではなく、成り立ちを掘り下げる事や在り方について一度考えてみる。そういう事を知ると、デザインはもっと味わい深い、楽しみになるのです。



【関連URL】

ドクターマーチン・エアウエアジャパン Dr.Martens Air Wair, Japan./オフィシャルサイト


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