グラフィックデザイナーのノート

松 利江子(フリーランス・グラフィックデザイナー)の公開ノート

2013年11月

ハンドメイド・ストラクチュア・展覧会・DMデザイン1

『紙と構造 ハンドメイド・ストラクチュア』展DMデザインです。

本日11月28日~2014年1月17日まで「竹尾 見本帖本店」で開催されています。


企画・ディレクション:中﨑隆司(生活環境プロデューサー・建築ジャーナリスト)

参加クリエイター:小西泰孝(構造家)+北村直也(建築家)

         ローラン・ネイ(構造エンジニア・建築家)+渡邉竜一(エンジニアデザイナー)

         佐藤淳(構造設計家)

グラフィック・会場構成:NOSIGNER

主催:株式会社 竹尾


ハンドメイド・ストラクチュア・展覧会・DMデザイン2

ハンドメイド・ストラクチュア・展覧会・DMデザイン3
DMは1枚のポストカードですが、組み立てるとこのような形になります。


届いたDMには、

柔らかい平面の紙は立体にすることで様々な形態を生みだすとともに自立する剛性を持つことができます。そのような構造体を生みだしていく手法も多様です。新しい建築に挑戦する構造設計家と、美しくて機能的な橋梁など土木構造物の設計をするエンジニアデザイナーが新たな紙の魅力と可能性を構造という視点から提案します。

とあります。


この展覧会が興味深いのは、参加者が紙を主に扱うグラフィックデザイナーではなく、建築関係のクリエイターである点です。

今回の展覧会の趣旨に相応しく、DMは単純に紙に案内を印刷したものではなく、折って、曲げて…立体物になります。


反応率などを厳密に計測されるDMは、実験的な試みはあまり出来ませんが、反響が必要だからこそ、思い切った決断が必要になる事もあるでしょう。そういった時に「またDMか」と目もくれずに捨てられてしまわないように、このようなアイディアをストックしておく事は何かの時に役に立つような気がします。(今回のようなDMは、簡単に作成できるものではありませんが…)

今回の1枚のポストカードから出来上がるこの立体はその好例です。
このような展覧会やイベントなどのDMは、会場に足を運んでもらうための仕組みづくりの大切さを深く理解してるからこそでしょうね。



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【関連URL】

紙と構造 ハンドメイド・ストラクチュア | イベント&レポート | 竹尾


●グラフィックデザイン・パンフレット・カタログ・冊子・ロゴなどのデザイン制作事例 | グラフィックデザイン事務所 DESIGN+SLIM 東京・神奈川 http://designslim.net/graphic-design.html


●DM ダイレクトメール 制作事例 | グラフィックデザイン事務所 DESIGN+SLIM 東京・神奈川 http://designslim.net/dm-design.html

フィリップス・ブランディング・CI・ロゴ・デザイン1

Philips の新ロゴデザイン

 ( http://www.philips.co.jp/ ) 



フィリップス・ブランディング・CI・ロゴ・デザイン2

Philips の新ブランドライン「innovation and you」

 ( http://www.philips.co.jp/ ) 




「フィリップス」から、盾(シールド)を使った新ロゴデザイン新ブランドライン「innovation and you」が発表されました。


新しいロゴデザインは、「従来のデザイン要素を保ちつつ、デジタルメディアとモバイルチャネルにより適した、21世紀を反映する新しいデザイン」ということで、今までのロゴに比べ、ラインは美しく、色は明るく強く表現され、洗練されたイメージに刷新されています。


今回から、新ブランドライン「innovation and you」が加わることによって、従来のロゴの改訂だけではなく、創業以来変わらないミッションを、より明確にしたものになったと思いました。


創業以来のミッションとは、

「斬新な選択により人々の暮らしをより豊かにする」

というものです。


また、「イノベーションを通じて皆様に貢献できることは何か」ということを常に考え、「『イノベーションで何ができるか』ではなく、『イノベーションを通じて皆様に貢献できることは何か』を重視している」ということから、新ブランドライン「innovation and you」は、人々の暮らしを更に豊かにしていくのだという、決意表明であると感じられました。

この感覚は、敗戦後、貧しかった日本を「廉価で高品質な家電製品で豊かにする」ことをミッションとしたパナソニック創業者・松下幸之助の哲学と近いものだと思います。


企業ロゴは、言わば会社の看板です。その看板であるロゴの刷新は、社外へ自社のミッションを示す以外にも、社内で社員の一人一人が、ミッションを再確認し共有する絶好の機会にもなります。


社外へ示す自社のミッションとは、顧客との約束と同意です。

約束という形のない、しかし必ず守らなければならないものをデザインしてロゴとして提示する事に、並大抵の試行錯誤とデザイン能力が必要な事は言うまでもありません。

「『イノベーション』を通じて皆様に貢献できる事は何か」というのは当然、顧客満足のためのミッションであり、その宣言はフィリップス社だけではなく、昨今、多くの企業で表明されているものです。つまり、時代の変化と言えるでしょう。

今回のフィリップス社のロゴデザインも単純にデザインが古くなったからというのではなく、時代のニーズ/ウォンツが変わったので、ロゴのデザインを変えたという事です。

そして逆説的に言えば、ロゴを変更した時に前のデザインが古く感じられない、クライアント企業の要請が感じられないデザインであれば、そのロゴデザインは時代に合っていない可能性があります。


企業がロゴを変えた時、そこにどのような想いや狙いが込められているのか、を企業のプレスリリースをチェックして読み解いてみる事は、私たちが生きている今の時代を読み解く事に繋がります。

デザインを何故、新しくしたのか、はプレスリリースに記述されますから、それを手がかりとして既存のデザインと新しいデザインを比較・検証してみる事は、とても大切な事なのです。



●Philips. Innovation and you. (Japanese)

「フィリップス」が提供するプロダクトデザインとそのミッションを示すムービー

(日本語の字幕が入っています)




●The design story of the new Philips shield

「フィリップス」の古い製品から現在までの、ロゴの変化と制作行程が見られます。




本社のあるアムステルダムで行われた、今回の新ロゴデザインの発表会は、大々的にプロジェクションマッピングを用いたものでした。ビルの窓を「フィリップス」の電動歯ブラシが磨いていく様子は圧巻です。このような新しいテクノロジーで人々を喜ばせることは、「斬新な選択により人々の暮らしをより豊かにする」というミッションを、そのまま反映させた発表会だと思いました。「豊かさ」は楽しさとセットなのかもしれません。


●Philips - Innovation and you - brand announcement light projection event

プロジェクションマッピングを用いた「フィリップス」の新ロゴデザインの発表会




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【ブランディングデザイン・ロゴデザインの関連記事】

High Times R: 『Bing』の新ブランドデザイン +「フラットデザイン」は必然。
 

【関連URL】

Philips - 日本

グラフィックデザイン・パンフレット・カタログ・冊子・ロゴなどのデザイン制作事例 | グラフィックデザイン事務所 DESIGN+SLIM 東京・神奈川


CI・ロゴのデザイン事例 | グラフィックデザイン事務所 DESIGN+SLIM 東京・神奈川


フェラガモ・展覧会・ディスプレイ・デザイン1

「Salvatore Ferragamo」銀座本店のディスプレイデザインです。

(写真は、今年6月に撮影したものです。)

「サルヴァトーレ・フェラガモ ミュージアム」主催の、「THE AMAZING SHOEMAKER『素晴らしき靴職人』展」が、現在イタリア・フェレンツェで開催されています。


この展覧会は、靴職人や靴を題材にしたファンタジー作品や、世界中で活躍するアーティストたちが同展覧会のために手がけた新作やインスタレーションなどを展示しています。


銀座本店のディスプレイデザインは、その中のひとつとして出展されている、「サルヴァトーレ・フェラガモ 」の生涯を元に描かれたコミックです。


フェラガモ・展覧会・ディスプレイ・デザイン2

アート作品のような趣ですが、伝達手段としてコミックを用いた表現は、歴史の重みを感じさせるブランドとしては、斬新な表現だと思いました。


その中の説明文のひとつには、

サルヴァトーレ・フェラガモの、高い品質と美しい靴は、世界中のロイヤルファミリーや、マリリン・モンロー、グレタ・ガルボ、オードリー・ヘップバーン、ソフィア・ローレンといったハリウッドスターたちを瞬く間に虜にしました。世界中のファッションショーでも紹介され、フェラガモの靴は世界を席巻しました。
と、あります。


このような内容を、コミックで表現しているというのは、とても興味深いです。

長年に渡る歴史もあり、世界中で名の知れたブランドなので、ストーリーで伝えるのは必然とも言えますが、フェラガモの購買層に向けてコミックで発信するというアグレッシブな姿勢は、非常に素晴らしいことです。今までの業績や成功に甘んじることなく、常に新しいアプローチを展開していることに感動を覚えましたが、常に新しいアプローチを展開しているからこそ、今日まで長い歴史を築いてくることができたとも言えます。

漫画について、確かに作家の筒井康隆氏も「文章で構成される小説と比較すると約30倍程度の情報量がある」と書いています。


普通に考えるとこういう場合、ポスターが使用されると思います。

しかしポスターもまた一コマ漫画と考えてみると、今回のコミックを用いたディスプレイデザインは、根本で大きくズレているとは言えないのかもしれません。

時として「ポスターは一コマ漫画なのかもしれない」という一つの可能性に気付けたのは収穫でした。


大切なのは伝えたい情報を正確に把握して、最も適切な手段を選ぶこと。

伝えたい情報とその情報が誰に向けて発信されるのか、そしてその為に最も適切な手段を選ぶ。

デザインとはそれらすべての上に成立したもので、こういったポスターを見た時に「漫画だから」と思考を止めてしまえば、その案件は関わった人すべての努力が徒労に終わってしまうかもしれないのです。


現地では少年時代の「サルヴァトーレ・フェラガモ」を題材に制作した、短編ファンタジー映画『White Shoe』も上映されています。YouTubeで予告編を観ることができます。


White Shoe




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【関連URL】

Salvatore Ferragamo

2014・サッカー・日本代表・ユニフォーム・デザイン

日本代表の新ユニフォーム

画像: アディダス ジャパン ( http://adidas.jp/jfa/ ) 

「サッカー日本代表 新ユニフォーム」デザインです。

2013年11月16日のオランダ戦から4年間、来年のブラジル・ワールドカップ本戦でも着用されます。


前ユニフォームのテーマは「結束の一本線」でしたが、それを継承した新ユニフォームのコンセプトは「円陣」です。


背中の肩部分に鮮やかなネオンカラー(従来の赤よりも鮮やかな蛍光レッド)の一本線が入り、選手たちが円陣を組んだ際に、ひとつの大きな輪になるようにデザインされています。


左胸のエンブレムを中心に広がる11本のラインは、「円陣」を組んだ後、試合開始に向けてピッチへと広がる選手を表現し、ストッキングにも「円陣」を表現した11本のラインが入っています。

あるいは「ストッキングとショーツと袖の端にラインを入れたのは、現在の日本のスタイルが密集したエリアでショートパスを繋ぐためではないか」と今回のデザインから読み取れます。


また、素材には軽さを追求した素材「adizero la・ito(アディゼロ ラ・イト)」を新たに採用し、サッカーのユニフォームとしては、アディダス史上最軽量(90g・Lサイズ)を実現しています。


スポーツのユニフォームのデザインは、実に大変なものだと思います。

とりわけ、サッカーのユニフォームは機能性を極限まで追求する事はもちろん、「相手チームから見て強く見えなければならない」、「士気を高めるものでなければならない」など、求められる要素がかなり多いからです。「円陣」というのはチームプレーに相応しく、前回の「結束の一本線」(絆)を引き継ぐコンセプトとしても良いコンセプトだと思いました。

当然、世相の変化も反映されているのでしょう。


左胸の日本国旗には、選手たちが実際に着用した歴代サッカー日本代表ユニフォームの生地を細かく砕き、新たに紡いだ糸を使用しているそうです。国歌斉唱の際に、選手は国旗の部分に手を当てますが、このようにして手をかけて作られた国旗は、「お守り」のようにも感じますし、「日本がワールドカップに出場できるはずがない」と言われていた先人たちの悪戦苦闘や、国の代表という責任の重さも感じさせます。


ポジションによってもユニフォームの形状は違いますし、機能・デザイン・歴史など、一枚のユニフォームにどれだけのものが込められているかと思うと、試合当日までちょっとドキドキしてしまいます。しかしそんな緊張感が代表戦の楽しみなのでしょう。

新ユニフォームは、明日(16日)のオランダ代表との国際親善試合で初着用されます。



●adidas サッカー日本代表新ユニフォーム 60秒CM



●ザッケローニ監督 新ユニフォームについてコメント




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【関連URL】

サッカー日本代表 新ユニフォーム|アディダスジャパン – adidas Japan

クアアイナ・パンフレットデザイン・表面

ハンバーガーショップ『KUA`AINA 』パンフレットデザインです。

両観音折り加工で、左右に開く両観音開きの仕様になっています。


『クア・アイナ』は、1975年にハワイにオープンし、現在ハワイに2店舗、イギリス(ロンドン)に1店舗、日本に20店舗あります。ハワイ生まれのハンバーガーショップが、アメリカ本土にはひとつもないのに、日本に多数あるのが興味深いです。


クアアイナ・パンフレットデザイン・部分

ハワイのショップなので、パンフレットのテキストやイラストに、「Hula」な雰囲気が反映されていました。アルファベットは、小さなフォントに至るまですべて、手書き風のもので統一されています。こうすることによって、全体の統一感を出すだけでなく、メニューを見ていても「ハワイのちょっと特別なハンバーガー」だということを印象付ける事ができます。


『クア・アイナ』のWebサイトには、コンセプトとして、
「厳選された最高の材料で作った最高の食事をカジュアルな雰囲気で提供すること。

 重要なのは自分たちが最高のものを提供しているのだという信念を持つこと。」

と、記載されています。


ハンバーガーという馴染みのあるメニューを、「厳選された最高の材料で作った最高の食事をカジュアルな雰囲気で提供すること。」というのは、『クア・アイナ』が作り出した魅力だと感じます。パンフレットにも、そのコンセプトと魅力がよく現れていると思いました。味を多少日本向けにアレンジした以外は、ハワイオリジナルだそうですが、そのバランスが上手くいっているのでしょう。


クアアイナ・パンフレットデザイン・中面

パンフレットの中面には料理写真のメニューと料金に加えて、パンとチーズの種類、トッピングできる食材がイラストで掲載されていました。これを見ながら、自分好みにカスタマイズできる楽しさがあります。ハワイアンなイメージ、ハンバーガーというダイナミックな料理を扱いながら、パンフレットやサービスに見られる細やかさは、日本のサービス文化にフィットさせている印象です。


クアアイナ・アボカドバーガー・フードデザイン

パンフレットのデザインと同様に「どのように食事を提供するのか」というサービスの在り方が、企業イメージをデザインしていると言えます。

『クア・アイナ』より安価にハンバーガーを食べられるファースト・フードは多くありますが、このような企業デザインが、一部のお客様に『クア・アイナ』が選ばれている理由のひとつでしょう。



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【関連URL】

KUA`AINA クア・アイナ


グラフィックデザイン・パンフレット・カタログ・冊子・ロゴなどのデザイン制作事例 | グラフィックデザイン事務所 DESIGN+SLIM 東京・神奈川


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