近年「オウンドメディア」が注目されていますが、国内的に「オウンドメディア」の先駆けとも言えるのが資生堂『花椿』です。『花椿』は長年、「中條正義」さんがアートディレクションされており、「エディトリアルデザイン」でも常に注目を集める、デザイン業界では有名な企業文化誌でした。
その『花椿』が、今年6月にWeb版がリニューアルされ、今月に紙版が季刊誌として新装刊されました。
(月刊誌『花椿』は、1937年に創刊され78年間続き2015年に廃止されています)
今回のリニューアルは、「20代へのリーチを高めること」を目的になされています。
実際、リニューアル前の『花椿』に対する20代の認知度はかなり低かったようですが、リニューアル後は20代~30代をメインユーザーに設定できるまでに成功を収めたようです。付け加えますと、リニューアル前のWeb版は、デザインを参考にする男性の閲覧も多かったそうです。
今回、「新装刊0号」の紙版を入手してWeb版と比較してみましたが、それぞれの媒体の特性を活かしつつ、どちらもブランディングに沿ったコンテクストにかなっており、完成度の高いものになっていました。
例えば、Web版ではメイクアップのムービーを入れたり、Webならではのエフェクトが使われており、紙版では「タッチ」をテーマに、用紙やインクにこだわり、手触りを意識したとても面白い凝ったつくりになっています。 (内容はまったく違ったものでしたが、今後Webと季刊誌をつなぐ新しいコンテンツもスタートするようです。)
また、Webと誌面の両方で使えるフォント、モリサワの「Type Square」を選定し「Webフォント」を導入することで、「Web」と「紙」の統一感も保たれています。(ちなみに、見出しは「本明朝」、本文は「秀英角ゴシック金」が使用されています。)
そしてデザインは、20代の女性に向けたポップな配色、日常を切り取った写真など、親しみと共感を大切にしたコンテンツが揃っていました。「銀座時空散歩」など、自社のことだけでなく、資生堂本社や関連施設がある地域(銀座)にまつわることも紹介されています。
「オウンドメディア」の要は、コンテクストとコンテンツです。
コンテンツのクオリティー維持は重要で、興味を持ち続けてもらうのは簡単なことではありません。しかし『花椿』は「今まで」を踏まえて、そして「この先」を見つめた、リニューアルがされていると感じました。
「Web」と「紙」の自然なカタチでの融合は、これからの避けて通れない課題となりそうです。『花椿』は今後はコレクターズアイテムとしての合本の制作も予定されています。「オウンドメディア」の先駆けであり、腕利きの編集能力を持つ『花椿』のリニューアルには今後とも注目していきたいと思います。
メイクアップのムービーを見ることもできる。
『花椿』新装刊号は、下記の資生堂直営店と関連施設にて無料で配布されています。
・SHISEIDO THE GINZA (東京都中央区銀座)
・資生堂パーラー 銀座本店 (東京都中央区銀座)
・資生堂ギャラリー (東京都中央区銀座)
・資生堂銀座ビル (東京都中央区銀座)
・資生堂企業資料館 (静岡県掛川市)
グラフィックデザイン:DESIGN+SLIM
http://designslim.net
【関連URL】
●エディトリアルデザイン 制作事例 | グラフィックデザイン事務所 DESIGN+SLIM 東京・神奈川 http://designslim.net/works_cat/editorial-design/
●ウェブのデザイン制作事例 iPhone・Androidアプリのデザイン制作事例 | グラフィックデザイン事務所 DESIGN+SLIM 東京・神奈川 http://designslim.net/works_cat/web-app-design/